こんにちは!筑波大学社会・国際学群国際総合学類5年次4年の青山俊之と申します。
後輩である鈴木哲平からバトンを受けたのですが、そもそもEntrepreneurship(起業家精神)とはなんなのか、ふと考えてしまいました。僕が専門として学ぶのは社会言語学という学問です。社会言語学は、大きなスケールでいうと「ことば」から浮き彫りになる社会文化を読み解き、小さなスケールではコミュニケーションのやり取りを紐解くことを行います。
ことばと一重に言ってもさまざまな捉え方があるでしょう。
- 言語としてのことば(例:日本語、英語)
- 社会的立ち位置や価値観を示す指標(例:敬語、言葉づかい)
- ことばの意味を示す概念(例:自己責任、起業家精神)
最後にある、概念としての「起業家精神」とはそもそもなんだったのか。調べてみたところ、元は経済学者のシュンペーターが「イノベーションを起こす人」という意味合いで使ったことが始めだったそうです。
イノベーションと起業家精神
今現在の起業家精神として訳されるアントレプレナーシップ(以下、アントレ)は、新しい経済の仕組みを作ることから広まっていったことばのようです。
では、イノベーションとは何を意味するのでしょうか?
シュンペーターは19世紀後半から20世紀前半までを生き抜いた方でした。また、当時は今のようなサービス中心の第三次産業よりも、製造業中心の第二次産業が中心の経済。そうした背景の中、1958年の『経済白書』でイノベーションは「技術革新」となってしまったようです。
しかし、今ではイノベーションを単なる「技術」だけの革新をもたらすものではない意味合いで使われていますよね。新しい仕組み、新しい捉え方や活用法などなど。
こうしたことばの意味合いのずれや変遷もやはり、人によって文化によって変わり、そこには「意味」付けをする誰かの価値観や解釈がどうしても含まれてしまうのでしょう。
大学とイノベーション
昨今、日本の国立大学においても法人化がなされたことを始めとしたさまざまな「イノベーション」が求められています。
「産学連携」というのもその流れの中で用いられるようになったことばでしょう。
かつては資本主義と社会主義の対立がありましたが冷戦終了を機に、資本主義を背景とした経済の活性化が展開され、僕が学ぶような人文学や一部の社会科学、自然科学における基礎研究にも「社会貢献」を求める声が増えてきたようです。
しかし、ここまで「アントレ」や「イノベーション」を問い直してきたように、人文・社会科学が問い直そうとするのは、今起きている人間活動の事象を「問う」ことにあるのではないでしょうか?
そうした中、改めて「イノベーションとはなんなのか?」「研究/学問とはなんなのか?」「そもそもの大学とはなんなのか?」ということを見つめ直す必要があるんじゃないかと感じています。
それは、研究者であれ、起業家であれ、です。
イノベーションの足音
今、新たなイノベーションとしてバイオテクノロジーや人工知能が現実に私たちの生活に落とし込まれるようになってきました。
これまでではできなかったことができるようになってきたというわけですよね。
かつては印刷革命がイノベーションとして、人の学びの環境を劇的に変えました。
では、今現在における「学び」はどのように変わっていくことができるのでしょうか?そんなことを真剣に考えるために僕は『入門学術メディア Share Study』を立ち上げ、活動を徐々に展開しています。
これまでを学び、今を見つめ、そしてこれからを考えることを多くの人と共有していきたいと思ったからです。
起業というエゴ
ゆくゆくはShare Studyを事業として展開していけるようにしたいと考えていますが、改めて「起業をする」ということはなんなのだろうかと考えてしまいます。
僕は今の変化に対応しきれないような大学、とりわけ人文・社会科学系や基礎研究の現状に、これから研究をしていきたいと思う身としても危機感を覚えてしまいます。
そこで、創設したのがShare Studyだったわけですが、結局のところ、自分の生活も考えるとただの慈善活動としてだけ続けるのには限界があります。
なんとか慈善活動ではない形で活動を続けられないかと考えた末に出てきたのが、事業化案であり、起業を見据えた活動となってきました。その一環として行ったのがこちらのクラウドファンディングでした。
自分の理想を現実にするための必要に迫られた結果、生まれたのがクラウドファンディングであり、「起業する」という選択肢です。
こう考えていくとふと思ってしまいます。
「アントレ」とは、言うなれば「自分の理想を実現するためのエゴを他者へのサービスとして具現化しようとする欲望」なんじゃないかと。
一側面ではありますが、いざ自分が当事者となって起業を見据えた時、このような一つの見方が生まれてきました。こうした欲望は悪いものだとは思いません。しかし、一方であくまでもこうした欲望を根本に持って自分は活動をしつつある、つまり他者を巻き込もうとしていることはよく胸に留めた方が良いと考えています。
結局のところ、欲望も使い方次第です。良い面もあれば悪い面もあります。
僕は社会やことばを研究者として省察する者としての目と、欲望をできれば良い方向に実現しようとする者としての目を持って、何ができるのかを真剣に考えていきたいと思います。
それがイノベーションにつながることを目指して。
これが僕の起業家精神です。
お読み頂き、ありがとうございました。
Text: Toshiyuki Aoyama
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