皆様はじめまして。
筑波大学国際総合学類4年の鈴木哲平と申します。
山脇さんからのバトンを受けて、起業家でもなければ社会人ですらない、言うならばただの学生である私が思うEntrepreneurship(起業家精神)についてこの場を借りて少しお話させてもらえればと思います。
自分自身の人生を振り返った時、この場にいなければ今の自分は無いと感じる場面が2つ思い浮かびます。
1つは文部科学省の展開する「トビタテ!留学ジャパン」日本代表プログラムの渡航前研修に参加した時です。
留学内容に制限がほとんど無く個人で自由に設定し審査を受けるのがこのプログラムの特徴で、シリコンバレーで起業する学生から輪島塗を世界に広げる活動をしている学生まで、本当に多様な分野で強い思いを持って世界に飛び出していく人達と出会いました。ありきたりな言葉かもしれませんが、自分の視野の狭さ、ビジョンの弱さを痛感した瞬間でした。
この時感じた、ぼんやりとした将来への不安ではなく自分自身への具体的な危機感をもっと多くの筑波大生に感じてほしいという思いで、帰国後はトビタテブランドマネージャー筑波大学代表として、筑波大生の留学促進活動に取り組んでいます。留学が優れているということではなく、それぞれが筑波大という環境を離れた活動をすることで見えてくるものがあると信じて活動をしています。
もう1つはリディラバの代表、安部敏樹さんに初めて会った時です。社会課題の解決には非当事者の関心が不可欠とし、「社会の無関心の打破」を理念に活動する彼の話で強調されたのは事業内容そのものではなく、描く理想の社会と、その実現のために足りないものは何なのかということでした。
ぼさぼさの髪型で、Tシャツ1枚で、講演の時間に遅刻してきた彼に圧倒された私はその場ですぐにインターンにアプライし、今ではリディラバの一員として一緒に社会課題の現場に人を連れていくツアー作りというお仕事をさせてもらっています。
デジタルデトックスから性産業まで幅広く社会課題をツアー化しています
私の行動を変えたこの2つの体験に共通していたことを一言でまとめると「その人の目指す社会が、初対面の私にもはっきりと見えた」ということです。
トビタテでは多くの学生とコミュニケーションを取りましたが、その中でも魅力的だと感じたのは端的に自分が何をしてきて、将来何を成し遂げたくて、そのために何が必要なので海外に行く、ということを論理的かつ熱く語る人たちでした。
安部さんの講演でも、1時間弱という限られた時間でより多くの聴き手を巻き込むために数多くのフックが用意されていましたが、最終的に彼が示したのは、自分の理想とする社会の実現には私たちひとりひとりが社会に主体的に関わっていくことが必要不可欠だというメッセージでした。一緒になって社会を良くしていきましょうという一体感は、本来一方的なコミュニケーションである講演という場においては意図的に設計しなければ生まれないものです。
この「自分の見ている、理想としている景色を他人にはっきりと見せること」が私の思うEntrepreneurshipです。事業にしても小さなイベントにしても、能力的に足りない部分は誰かに補ってもらえます。重要なのはその誰かが一緒にやりたいと思うような絵を見せることができるかどうかだと思います。
私自身、能力が高いわけでもなければ強いwantを持っていたわけでもなく、観光行動に興味があります、という程度の思いを持っているだけでした。しかし、トビタテの学生やリディラバを通して出会った社会課題の当事者の思いに触れることで「人が社会をより良くしたいと思えるきっかけをつくりたい」という思いを抱くようになり、目的だった観光は手段へと変わりました。周囲の素晴らしい人たちの描く景色を見る機会に恵まれていなければ、一緒に働きたいと思うことが無ければ、今でも私はぼんやりと観光で何かおもしろいことがしたいと思いながら手を動かすことができないという状態だったかもしれません。
私がそうであったように、身近でどれだけ多くの景色を見ることができるかによって自分の描く景色が変わったり、具体化されたりということは多くの筑波大生に当てはまるのではないかと思っています。そして同時に、誰かの景色を変えうるような素敵な活動をしている人がこのつくばにはたくさんいるということも感じています。それを知る機会が直接どこかで会う、知人に紹介してもらうといったような偶然性の高いものに限定されているのはもったいない。そういった思いで友人と立ち上げたのが「ぷらつく」というwebメディアです。小さな規模ですが、ここにある記事によって見知らぬ誰かの景色が少しでも鮮明になってくれたら、そして同じ思いを持った学生がメンバーとなってくれたらとても嬉しいなと思いながら活動しています。
山脇さんも取材に協力してくれました!
繰り返しになりますが、私の思うEntrepreneurshipは「自分の見ている、理想としている景色を他人にはっきりと見せること」です。起業家や学生といった肩書きに関係なく、誰もが自分の理想とする社会像を持ち、その実現のために周囲を巻き込んで活動する。そんな人が増えることを願っていますし、何より私自身が常にそうありたいと思っています。
お読みいただきありがとうございました。
Text: Teppei Suzuki
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