対談:落合陽一さん×渋谷修太さん スマートフォンに変わる人間と情報のインターフェイスとは?(3/3)

筑波大学出身の起業家、実業家から在学生の様々なEntrepreneurship(起業家精神)を知ることを目的とした、筑波フューチャーファンディング(TFF)のオウンドメディア「TwinWeeks」です。
第三回のインタビューは対談形式で、筑波大准教授の落合陽一さん( @ochyai )とフラー株式会社CEOの渋谷 修太さん( @shibushuta )にポストスマートフォンのインターフェイスについてお伺いしました。
ファシリテーターはTFF理事の常間地( @ST_TNMC )です。


(お詫び:取材日は2016年11月でしたが、私たちTFFの諸事情により公開が1年超遅れてしまいました。今回はその最終回です(編者)) ※Part.2はこちら

落合陽一(おちあい・よういち)写真左
1987生、30歳。メディアアーティスト、2015年東京大学学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の短縮修了?)、博士(学際情報学).日本学術振興会特別研究員DC1、米国Microsoft ResearchでのResearch Internなどを経て、2015年より筑波大学図書館情報メディア系助教 デジタルネイチャー研究室主宰。2017年12月、「デジタルネイチャー推進戦略研究基盤」を筑波大学内に設立し、筑波大学助教を退職、及び本基盤の基盤長/准教授として筑波大学に再就任。

渋谷 修太(しぶや・しゅうた)写真右
1988年生。新潟県出身。国立長岡工業高等専門学校卒業後、筑波大学へ編入学。グリー株式会社にてソーシャルゲーム最盛期にマーケティング事業に従事した後、2011年11月フラー株式会社を創業、代表取締役CEOに就任。2016年には、世界有数の経済誌であるForbesにより30歳未満の重要人物「30アンダー30」に選出される。ユメは世界一ヒトを惹きつける会社を創ること。


(常間地)時代が激しく移り変わる中で、スマートフォン時代の次の時代、その次と考えていくときに、学生や若いベンチャーがどういうマインドセットを持って、世の中と接して、何を学んでいけばいいのでしょうか?


落合 陽一さん(以下、落合)
この前、WIRED さんとのワークショップで、初日にハードウェア、2日目にソフトウェア、3日目に機械学習があって、腕時計型のウェアラブルデバイスを作ろうっていうのをやってたんですね。平均年齢15歳で、どれだけ脱落するかなと思ったんですけど、みんな最後までいったんですよ。

腕時計型のウェアラブルデバイスで行動認識させてそれをディスプレイに表示させるというデバイスを作る。

でもこれって5年前の修士論文なんですよね。みんなやってたんですよ、5年前。

スマホとかウェアラブルとかで、それで修論書いてたんですよ。 24歳の技術到達点として僕はこれをやりましたと言って修士号を取ってたんですよ。

それが今15歳でもできる。

ということは5年前に修士論文書いてた人達は今の15歳と有意差はないんですよ。

5年経ったら10歳下までできるようになってたっていうことは、この5年間でマイナス5年だったわけですよ。

(落合)この5年を走り続けたら別ですけど、企業入ってパワポばっか作ってたら15歳がやっても一緒っていうことです。

これは非常に由々しき事態で。インターネットの何がすごいかというと、インターネット上ではあらゆるサービスが接続されているので、1回発明されたものは元に戻らないんですよ。

後にこういうものを作れたという能力は総体的には意味がなくなっていくんです。 若ければ若いほど有利、時間があれば時間があるほど有利。


それがだめならばオールドな世界に生きなきゃいけないですね。義理と人情と仁義の世界に生きなければいけない。そこでコネと金で何とかするという親父 v.s. 若い人みたいな状態に今もなってるじゃないですか。

だから若い人は時間を有意義に過ごせたらいい、でもやるのやめた瞬間に終わるからな。

教員はいいよ、走り続けなければいけないから。それはなんでかって言うと最先端のことやらないと論文が出ないから。 つまり今の最先端のことを常にやってなきゃいけないから。

会社に入ると別に最先端のことはやらなくていいんですよ。どこかでてきたかなっていうのを真似してやってれば良くて。そしたらその人に優位性はなくて。

でも、会社の研究は実用化の研究だから、それはそれで違う最先端で。逆に表に出せないことも多いし、評価経済的には難しいかもね。

(常間地)そんなスピード感が加速度的に増していく世界の中で、落合さんはどのように対応していきますか?


(落合)人を雇う。人の雇い方を考える。ですね。


(渋谷)企業ができることは、本当は大学とかで一緒にならなそうな才能を、結びつけたりするのが大事なのかなーと思っていて、それはすごい意識してますね。

そういう創作物にしか価値がないような気がして。

スタートアップとかベンチャーで R&D とかできないから。基本的にプロダクトはマーケットにさしていく、というところをみた採用になってしまう。


(落合)うちはもうガチR&D だからね。

(渋谷)R&Dのところまでやるっていう感じですよね。


(落合)会社にするときは R&D をプロダクトにする ところをやる。これは最先端の発見より難しいことも多い。

自分がスタートアップやってるときに思うことは、俺の足りない時間をどう買ってくるかというところを投資家に説明して 金をもらう。 アウトソースできるものは全てアウトソースする 。だってこっちが設計してそれを起こすのは誰でもできるし、それはバイトでいい。

でも、おれはできないことはできないわけだから開発研究はチームでやる。今のフェーズではプログラムは俺が書いた方が早い時が多いから俺が書いちゃうことも多いけど。

フォーカスできるところは全てフォーカスしてあとはアウトソーシング。 社内には全くおかない。 だからお金の出し方がめっちゃわかりやすい。


(渋谷)この落合さんの研究室だったら、産業化できるものがたくさんあると思うんですけど、他の研究室ってどうなんですかね。


(落合)ぶっちゃけた話、そこをやろうと思ってやってないと思いますよ。どっちかって言うと日々生きていくのに必死な研究者が多いから。


(渋谷)そこを意識してやってくれる先生を集めたり、そういう研究室がないと産学連携は難しいですよね。

スタンフォードとか MIT とかはベンチャーがすごいポコポコ出てくるじゃないですか、つくばはどうしたらいいですかね。


(落合)自分で手を動かさなくていいんだったら起業すればいいと思うんだけど、時間は有限であって。 でも、起業しないとできないこともあって。でもお金が解決してくれる問題があって。

そこに値踏みする技術っていうのがあって、自分が作っているものが果たしていくらだっていうのがわかる技術、それを身につけるのが重要だと思うんですよね。


(渋谷)そこが分かるようになってくれば、もっと出てきますよね。


(落合)この産業規模だったら100億円ぐらい行くんだよな5年後に、5年後に 100億円行く産業規模だったら上場するのは大抵3年後ぐらいかな。3年後ぐらいで上場もしくは他の企業が買う、 ならば今開発費として必要なのは5000万ぐらいかなと。 

そしたら最初を2000万もらって、それでうまくいったら後から1億円もらってみたいなことを考える、そんな考え方を持った人がいればいいんですよね。

せっかく理系になったんだったら研究した方がいいんですよ。で、研究したものでお金を稼げるんだったら稼いだ方がいいです。


(渋谷)自分が作っているのが今後いくらぐらいになるのかみたいな授業はないんですかね。できる人が少ないか。


(落合)普通の起業家でもできなそうな授業なんですよ、これ。 起業家は自分の事業しかやっていないから。それを見てるVC を連れてこないと多分難しい。

100社くらい投資している VC を連れてきて、この段階でいくらぐらいつけるんだろう、っていうのがわかるのは面白そうだけど。


(常間地)最後に筑波大生に限らず、学生に対しての一言メッセージをください。


(落合)研究しようぜ。

自分にしかできない価値があるならそれで挑戦しようぜ。

自分が持っている価値をいかに社会実装するかみたいなのが一番重要で。それは大学生なら大学生なりのやり方がある。外の条件の中から抜きん出ているものを選ぶんじゃなくて、深掘りしていくのがいいんじゃないかと思います。まあ深堀りはいつでもやめられるからね。

自分がこれも向いてないみたいに思ったら他のことしてもいいんじゃない。

(渋谷)人生でやりたいことを見つけるのがいいのかな。みんな後回しにしがちだから、先にやりたいことをきめちゃうっていう。楽しんでできることを探すっていうのが大事だけどね。


(落合)おれ実はやりたいことを何もないんですよ。 要素に分解すればあるんだけれども別に俺がなんとかっていうのはない。

「あっ」とか言っているうちに、「あっ、できる」とか言ってやってる。

やりたいことが多すぎて、やりたいって思ってるうちにはもうやっちゃってることの方が多い。つまり、やりたいと思うより先に手を動かしてることの方が多い。自然体でできることをやってくしかない。

(渋谷)あと学生にいうとしたら起業しなくてもいいけど、ベンチャーとかでその世界観を見るのはとても良いと思う。


(落合)市場価値がダイレクトに評価されるから面白いよね、お前はいくらみたいな。


(完)

Writing: Yoshihito Takashiba (TFF)

Interview, Edit: Satoru Tsunemachi (TFF)

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